研究概要 |
第2年次の本年は,昨年度に引き続き,壁画の構成成分のうち,特に有機物質の分析を行った。壁画表面の洗浄に際し,壁画に含まれる有機物質の水あるいはさまざまな溶媒に対する溶癬度が大きく影響を与えるため,有機物質の同定を重点的に行った。調査に当たっては,米国ゲティ保存研究所と共同研究を行った。壁画の微小試料を用いて,ガム,乾性油/樹脂/蜜蝋,タンパク質の同定を,それぞれ異なる分析条件を用いてGC/MSやELISA法を使用して分析を行った。今回の分析により,中央アジアの壁画に胡桃油あるいなポピーシード油に類似した乾性油,動物由来めタンパク質,卵由来のタンパク質などさまざまな材料が使用されたことを初めて明ちかにした。特に,土製の壁に描かれたセッ壁画に乾性油が膠着材として使用されている例として極めて珍しい事例を明らかにすることができた。土製の壁に描かれた壁画の中にも,油性の膠着材,水性の膠着材,樹脂系のグレーズなど,さまざまな材料が使用されていることが明らかになった。
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