研究概要 |
本研究は,これまで主に縦ずれ断層として報告されている平井断層,櫛引断層,江南断層,綾瀬川断層などの活断層を,横ずれ変位に注目して再検討し,その分布や連続性,変位様式を明らかにするとともに,段丘開析谷などを用いて横ずれの平均変位速度を検討する計画である。また,四国の中央構造線活断層帯と比較しながら,断層変位地形の出現形態の特徴を地質構造と関連させながら検討し,活構造の異なる環境での断層地形の違いについて議論する予定である。 今年度は,関東平野の活断層のうち,昨年度の調査の結果,横ずれ変位が比較的明瞭に認められることがわかった江南断層から綾瀬川断層について重点的に調査を行った。その結果,江南断層は綾瀬川断層に連続するように吉見丘陵方向まで延びており,丘陵や段丘の開析谷を左横ずれさせていることが新たにわかった。一方,綾瀬川断層では,昨年度に引き続き変位地形を詳細に判読するとともに,段丘崖や開析谷の左横ずれ変位地形の計測,図化を行った。航空レーザー測量(LiDAR)によって得られた2mメッシュのDEMを用いて地理情報システム(GIS)で分析し,断層崖の図化や段丘崖の横ずれ量の計測を行った。そのほか,国土基本図などの大縮尺地形図を用いた段丘開析谷の横ずれ量の計測や現地での断面測量を実施した。なお,トレンチ調査など地質調査が行える用地を探したが,今のところ,いずれの断層でも人工改変などにより見出すことができていない。これについては来年度の課題としたい。四国の中央構造線では,段丘崖の右横ずれが連続的に認められる池田断層において地形分類の再検討とともに,鍵となる地形面の年代を明らかにするための堆積物の調査を行った。複数の地形面の右横ずれ変位量から,平均変位速度がこれまで以上に高精度に算定できる可能性が高いことがわかってきた。
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