研究概要 |
中国新彊ウイグル自治区のアクス北方では,天山山脈最高峰の托木尓(Tomur)峰(標高7,439m)をはじめ,標高4,000mを超える山が連なっており,高所には氷河が形成されている。托木尓峰の南方からタリム盆地に流下する台蘭(Tailan)河の河谷にはラテラルモレーンが連続的に分布し,台蘭河谷出口の扇頂付近にはターミナルモレーンが形成されている。本研究は,天山山脈内のモレーンとタリム盆地の扇状地との連続性が確認可能な台蘭河周辺を対象として,氷河の前進・後退期と段丘形成時期を対比させながら,断層変位を地形発達史的に議論することを目的とするものである。 H18年度は,既往研究の成果を参考にしながらCORONA衛星写真(地上解像度約3m)やASTER(地上解像度約15m)などの衛星データを判読し,台蘭河沿いの地形分類図および活断層分布図を作成した。 また,2006年7月に現地調査を実施し,従来から調査報告がなされていた天山山脈南麓を限る台蘭河断層よりも南側(下流側)で,融氷水性堆積物を変位させた低断層崖を確認した。 また,写真判読と現地調査による露頭観察によって明らかになった河成段丘面の広がりや相対的な新旧関係,既往研究の成果を比較検討した結果,天山山脈南麓における最終氷期最盛期以降の堆積段丘の形成時期として,5〜6時期の時期が推定された。ただし,H18年度の調査では年代試料がほとんどえられていないため,段丘編年に関しては,H19年度以降,OSLの年代測定法を利用して年代値を増やし,更なる議論を行う必要がある。
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