研究概要 |
本研究は,中国新彊ウイグル自治区天山山脈最高峰の托木尓(Tomur)峰の南方から,タリム盆地に流下する台蘭(Tailan)河の河谷を対象として,氷河の前進・後退期と段丘形成時期を対比させながら,断層変位を地形発達史的に議論することを目的とするものである。 本研究において,段丘形成時期の推定とその氷河変動との対比は重要な検討課題である。1年目(H18年度)の研究では,衛星写真・画像判読と現地調査結果により,台蘭河においては少なくとも5〜6時期の段丘形成時期があると推定されたが,やはり年代試料の不足から編年が課題として残った。そこで,2年目(H19年度)は,タリム盆地に流入する諸河川の河成段丘について,既往研究や研究代表者の未公表データも含めて比較検討を行った。衛星写真・衛星画像判読に基づき各河川の河成段丘の相対的な新旧関係を明らかにし,次いで段丘の形成年代と地形面の広がりに着目して複数河川の比較検討を行った。一般に,タリム盆地に流入する諸河川は山麓部に広大な複合扇状地を形成しているが,各河川における段丘形成時期を比較した結果,およそ14〜15kaよりも後に形成された複数の河成段丘は,それらの扇状地を開析した谷の中に形成されるという共通的特徴があることが明らかになった。 この成果と今後の研究課題について,第四紀学会において発表を行った。
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