研究概要 |
本年度は,インド「ユーラシアプレ憎ト境界における活断層系の運動様式の解明を進める目的で下記の2点について研究を実施した. (1)CORONA偵察衛星写真の判読に基づくパキスタン地震の起震断層の発見と公表 世界ではじめて,2005年10月に発生したパキスタン地震の地震断層をCORONA偵察衛星写真の判読から明らかにし,学会誌に公表した.本断層をバラコット-ガリ断層と命名し,詳細な断層変異地形の記載と,他の手法で求めた地殻変動モデルと比較し,極めて調和的な結果が得られた. (2)ヒマラヤ前縁帯活断層のトレンチ掘削地点の選定及び現地調査 これまで活動歴が明らかになっていなかったネパール中部ブトワル周辺を対象に,トレンチ掘削調査候補地を3箇所選定した.現地では,それぞれの候補地へ予備調査をおこない,活断層地点が明瞭に認定でき,細粒な堆積層が想定されるブトワル市内1箇所をトレンチ地点として選定した. 引き続き,選定地点にてトレンチ掘削調査を,ショベルカーを用いて実施した.トレンチ壁面からは,未固結堆積層中に明瞭な断層面が認められた.地層の年代測定の結果から,この断層は約3000年前以降に最新活動時期があること,1回の地震で約8mずれたことが明らかとなった.これは,ヒマラヤに発達する最も長大な巨大活断層系の運動様式を解明する上で,特筆すべき成果となり,来年度国際学会等で発表する予定である.
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