研究概要 |
平成19年度は,平成20年度より継続して日本および韓国の地方団体別の財政データベースの作成を進め,大学院生をはじめとして多くの方の助力を得て,一応の完成にこぎ着けることができた.このデータベースを利用することにより日本の分については1960年度より現在に至るまでの主要な歳入・歳出項目のデータを収録しており,韓国の分についても主として1980年代以降の年度について,同じく現在に至るまでの主要な歳入・歳出項目のデータを収録している.ただし,原資料(日本分「市町村別決算状況調」,「都道府県別決算状況調」,「韓国分「地方財政統計年鑑」)の誤植も含め,データの間違いのチェックなど,さらに作業を進めて行く必要がある. このデータベースを利用した本格的な日韓比較分析および日韓両国での現地調査については主として平成20年度に実施する予定であるが,完成したデータベースのうち,日本の分のデータを利用した分析成果として梶田(2008)を公表し,韓国分のデータを利用した分析結果としては『現代韓国の地理学』(神谷浩夫編)の1章「韓国における地方財政の地理」として公刊予定であり,既に担当分の原稿は完成している(現段階では出版時期未定).前者では,これまで筆者が進めてきた小人口町村に対する地方交付税の傾斜配分についての定量分析をより正確な形で行うことが可能になり,後者では従来,数年次分で道スケールでの分析がほとんどであった韓国地方財政の空間構造に関する分析の精度を大きく高め,1980年代以降における高度経済成長,IMF危機とそこからのV字回復という経済環境の劇的な変化が地方財政の空間構造にいかなる形で反映されているかを詳細に検討することが可能になった.
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