研究概要 |
平成18年度には,1台の操作用マスタと4台の計算用グリッド・コンピュータを接続した実時間咬合接触表示システムを開発した.咬合の解析に対して十分な解像度を持つデジタル歯列モデルの要素数は数十万にも上るため,上下顎のデジタル歯列モデル間の干渉検出に必要な計算は膨大な量になる.本システムでは,デジタル歯列モデルを構成する各ポリゴンの接点データを平面に射影し,デジタル歯列モデルのデータをZ-mapとして取り扱うことで大幅に計算量を減少させた.さらに,必要な計算を複数台のグリッド・コンピュータに分散することで,人が下顎の動きを手で操作しながら,上下顎の干渉箇所をリアルタイムに表示するシステムを構築した. 本システムでは,通信プロトコルにTCPを用いた.通常,遠隔ロボットシステムなどではUDPが用いられることが多いが,本システムではデータの欠落や順序の入れ替わりが許されないため,データの保証をOSのカーネルランドで請け負うTCPを選択した.また,今回システムに用意した計算用グリッド・コンピュータ群は,4台すべて同種の構成にした.そのため,各グリッド・コンピュータの処理速度は一定であると仮定し,処理速度に応じたタスク割り振りなどは考慮しなかった. 本システムを運用するに当たり,患者の歯列形状のデジタルモデル化手法も今後検討が必要であることがわかった.接触式の3次元形状計測装置では,計測に長い時間がかかるだけではなく,プローブ径(通常φ0.5mmが限界)よりも細かな形状特徴を計測できない.また,レーザ光を照射する非接触形状計測装置では,ダブルピークや表面性状に依存する誤差が無視できない程度であることがわかった.そこで,19年度には歯列形状のデジタルモデル手法の確立も課題として取り組む必要があることを確認した.
|