研究概要 |
手続き:幼児9名(平均年齢6歳6か月)を対象に個別実験を行った。言語作動記憶課題(Listening Span Test),視空間作動記憶課題として空間課題(Space Task)及びパターン課題(Pattern Task),文章理解課題(問題文:空間情報の有無を設定,質問文:再認課題及び推論課題)を実施した。 結果と考察:(1)言語作動記憶と視空間作動記憶との関連性:言語作動記憶課題と視空間作動記憶課題2種との間に関係は認められず,言語作動記憶資源と視空間作動記憶資源とが異なるという成人と同様の結果が得られた。(2)文章理解と作動記憶との関連性:空間情報あり条件では,パターン課題と文章理解課題「ディストラクタ質問文」(正答に深い理解を必要とする)との間に正の相関(r=.82,p<.05)が認められた。空間情報なし条件では,言語作動記憶課題と文章理解課題「オリジナル質問文」(表層的な理解で正答できる)との間に正の相関(r=.74,p<.05)が,パターン課題と推論課題(正答に深い理解を必要とする)との間に負の相関(r=-.73,p<.05)が認められた。空間情報がある文章では視空間作動記憶容量が大きいほどより深い理解に至り,空間情報がない文章では言語作動記憶容量が大きいほど,また視空間作動記憶容量が小さいほど成績が高くなっている。文章に具体的状況が描写されている場合は,視空聞作動記憶容量の大きさが,文章を聞きながらその描写を正確に把握することを促進するようであるが,その一方で,文章に具体的状況が描写されておらず,読者自らが状況を構成していかなければならない場合は,言語情報をより正確に処理する作業が求められ,その作業においては,視空間作動記憶よりも言語作動記憶の働きがより重要となる可能性が示された。
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