研究概要 |
手続き : 幼児9名(平均年齢6歳6か月)を対象に個別実験を行った。言語作動記憶課題(Listening Span Test),視空間作動記憶課題の空間課題(Space Task)とパターン課題(Pattern Task),文章理解課題(問題文 : 空間情報の有無,質問文 : 再認課題と推論課題)を実施した。 結果と考察 : 空間課題平均得点から容量(空間)大群6名小群3名を設定した。文章理解課題(再認課題)の平均得点について,視空間作動記憶容量(空間)2(大/小)×問題文空間情報2(有/無)×質問文4([オリジナル]/[パラフレーズ]/[意味変更]/[ディストラクタ])の3要因分散分析を行った結果,空間情報×質問文の交互作用(p<.05)が得られた。言語作動記憶課題得点,パターン課題得点に関しては同様の傾向(p<.10)が得られた。下位検定の結果,[オリジナル](表層的な理解で正答できる)では空間情報無し条件の得点が有り条件よりも高かったのか対し[パラフレーズ](命題レベルの理解で正答できる)では有り条件の方が高かった。また[意味変更][ディストラクタ](正答に深い理解を必要とする)では群間差は認められなかった。文章に具体的状況が描写されていない場合は,読者自らが積極的か状況を構成していく必要が生じ,負荷の増大と逐語的処理への資源配分の結果,[オリジナル]の得点が高くなったと推測される。しかし,状況描写が有る場合に[意味変更]より[オリジナル]の得点が低くなったことは予測に反し興味深い。成人の読解過程は表層的理解から命題的理解,状況的理解へ進むと想定されている。本研究の結果は,幼児かおいては状況レベルかある程度相当する理解の方がより達成されやすい可能性を示唆しており,表層的理解や命題的理解は就学後の習熟を待ってより確実になるという幼児に特徴的な読解過程の解明に一歩迫ったといえる。
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