研究課題
日本上空の対流圏・成層圏における酸素(O_2)濃度の変動と地球規模の二酸化炭素(CO_2)収支の解明に向け、以下の研究を遂行した。1.O_2濃度の測定精度の維持と成層圏大気試料分析の検討(1)現有のO_2測定装置が達成している±1.1ppmの高精度を維持するため、質量分析計および試料導入部の細部にわたる調整と標準ガスを用いた性能確認を実施した。(2)-3ppm/yrから-4ppm/yr程度と予想されるO_2濃度の経年変化を検出するには、長期間にわたってO_2濃度が安定している標準ガスが不可欠であるため、現有の標準ガスの相互検定を定期的に行った。また、目標濃度から数ppmv以内の精度で、48Lの高圧シリンダーに15MPaで標準ガスを充填し量産する技術を確立した。(3)成層圏大気試料専用の分析用配管を開発し、また試料容器を用いた保存試験を行うことで、試料分析の際のO_2とN_2の分別と容器表面の酸化やO_2の優先的な吸着による試料の変質を評価・補正する手法を開発した。2.対流圏におけるO_2濃度観測の本格的な展開小型チャーター機に搭載する半自動大気採集装置とO_2濃度分析用の試料採集容器を新たに製作し、定期旅客機および小型チャーター機を用いて日本上空でのO_2濃度の高頻度観測を実施した。3.新たな成層圏試料の採取6月に行われた三陸大気球観測所での成層圏大気採取実験に参加し、搭載機器の準備と実際の採集に当たり、高度35kmまでの11高度の大気試料の採取に成功した。これまでに行った成層圏試料試料の分析結果から、大気主要成分の重力分離が成層圏で検出可能であることを初めて示唆し、また成層圏においてO_2濃度が経年的に減少しており、化石燃料の燃焼による影響が成層圏にまで及んでいることが分かった。得られた知見を、Geophysical Research Letters誌上で発表した。
すべて 2006
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Geophysical Research Letters 33, L13701
ページ: doi:10.1029/ 2006GL025886