研究課題
東京大学海洋研究所に設置されている海水中溶存希ガス濃度分析システムを用いて、海水試料の希ガス濃度の精密測定を行なった。分析した海水試料は昨年度に海洋調査船白鳳丸の研究航海において沖ノ鳥島近海のフィリピン海で採取したものを用いた。これらの試料はCTD装置を備えたカルーセル採水システムを用いて一つの地点において深さ方向に異なる場所から採取し、なまし銅管に移して保管していた。採水と同時にCTD装置により、海水の塩分、温度、水圧を測定してあり、ヘリウム同位体分析用の試料も同時に採取してある。分析の途中で定期的に大気と溶解平衡にした海水を標準試料として、溶存する希ガス濃度を分析し分析システムの評価およびキャリブレーションを行なった。その結果、どの測点でも水深が深くなるにつれ希ガス濃度は高くなり、重い希ガスほど変化が大きかった。これは水温が低い深層では希ガスの溶解度が大きいことと関係しており、その深さの水温から計算される飽和濃度に近い変化を示した。海洋の深層でヘリウムからキセノンまでのすべての希ガス濃度を報告した例はほとんどなく、海水中の希ガス濃度を決める要因、例えば海水の混合や起源を考える上で重要なデータが得られたと考えられる。さらに同じ場所、同じ水深でヘリウム同位体比も分析しており、海水の流動を考える上でも有益なデータとなるかもしれない。昨年度作成した主要溶存ガスを分析する装置を用いて、海水試料の溶存窒素濃度の精密測定を行なった。分析した海水試料は白鳳丸の研究航海においてインド洋で採取したものを用いた。採水はCTD装置を備えたカルーセル採水システムを用いて行なったが、試料は真空コック付きガラスボトルに海水のまま保管していた。また、海水とは溶存ガスの組成が大きく違う温泉水の分析を行ない、装置の分析精度を検討した。
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