研究概要 |
山梨県南巨摩郡南部町の温泉施設が所有する2本の掘削孔(地下150mおよび1,500m掘削)より、メタンを大量に含む地下水を採取した。採取した地下水の陸上での水温、pH、酸化還元電位、電気伝導度は、それぞれ30-32℃、9.4-9.7、-280mV〜-393mV、46.6-93.9mS/mであった。ガスクロマトグラフィにて地下水に含まれるガス成分を分析した結果、その約98%がメタンによって占められていることが明らかとなった。 地下水に含まれる微生物を蛍光染色したのち落射型蛍光顕微鏡で観察したところ、地下150mの堆積層に由来する地下水からは約10^3cells ml^<-1>の微生物細胞が検出された。一方、地下1,500mの堆積層に由来する地下水からは約10^4cells ml^<-1>の微生物細胞が検出された。古細菌の16S rRNA遺伝子をターゲットとしたクローン解析を行ったところ、Methanomethylovorans, Methanotorris, Methanobacterium, Methanosaetaといったメタン生成古細菌に近縁な遺伝子が数多く検出された。さらに、地下水中のメタン生成古細菌を対象とした嫌気培養を行ったところ、20mMの酢酸を加えかつ地下水の現場温度より約10℃高い40℃にて培養した系において、メタン生成菌の増殖が観察された。以上の結果より、地下150mおよび1,500mの帯水層に由来する地下水中のメタンは、地下圏に生息するメタン生成古細菌によって生成されていることが示唆された。
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