研究概要 |
本研究の目的は、深部環境の地下水中に見られる微生物の嫌気培養および遺伝子解析を行って、地下帯水層中でのメタン生成プロセスとその生成速度を推定することである。 平成19年度は、山梨県南巨摩郡南部町および静岡県島田市の温泉施設が所有する地下1,500mの掘削井戸にて、2ヶ月に1回のペースで地下水を採取し、溶存ガス分析、微生物の嫌気培養および各種遺伝子解析を行った。ガスクロマトグラフィーを用いたガス分析の結果、これらの地下水には大量のメタンが溶存していることが明らかとなった。次に、地下水中のメタン生成菌をターゲットとした嫌気培養を行ったところ、水素と二酸化炭素の混合ガスを加えた培養系においてメタン発生が観察された。また、微生物の遺伝子解析からメタン生成菌に属する細菌が増殖したことが明らかとなった。一方、水素と二酸化炭素の発生源を推定する目的で地下水に有機物基質を添加した嫌気培養を行った。その結果、有機物の分解過程で水素と二酸化炭素を発生する発酵細菌が増殖した。一連の結果より、堆積層中の有機物を分解し水素と二酸化炭素を発生させる発酵細菌と水素と二酸化炭素よりメタンを生成するメタン生成菌とが深部地下帯水層中で共生関係にある可能性が示唆された。特に、発酵細菌の有機物分解過程で発生する水素と二酸化炭素をメタン生成菌がエネルギー源および炭素源として利用している可能性が見出された。 上記の微生物の嫌気培養に関連しだ研究結果は、地下圏微生物に関連する国内外の学会にて発表された(Kimura、et al.木村ほか)。さらに、地下帯水層中の微生物の遺伝子解析の結果については、国際学術雑誌にて発表された(Kimura, et al.)。
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