人為活動が盛んな都市部などで発生した大気汚染物質は偏西風によって輸送され、東アジア地域全体に影響を及ぼすことが指摘されている。太平洋上の離島などは近傍からの大気汚染物質の影響をうけずに、長距離輸送してくる大気汚染物質の影響をモニターすることができる。小笠原諸島の父島はそのような長距離輸送のモニタリングに適した離島である。父島にある首都大学東京小笠原研究施設に、2006年11月に一酸化炭素計およびオゾン計を設置し、自動で連続測定をおこなうようにした。一酸化炭素は燃焼の良いトレーサーになり、オゾンは輸送中に光化学的に二次生成し、植生などに影響を及ぼすためこれらの物質の測定を行った。2007年3月にも測器のメンテナンスを行なうために父島を訪れた。これらの訪問期間に大気中の揮発性有機化合物(VOC)の測定のために、三日月山において大気を定期的にキャニスターにサンプリングした。実験室に持ち帰ったあと、GC-FIDおよびGC-MSによりさまざまなVOCについて濃度測定を行った。また、帰りの船上において3回サンプリングを行なった。一酸化炭素およびオゾンの連続観測の初期結果をみると、東京から1000kmほど離れた太平洋上の離島であるにも関らず、これら大気汚染物質の濃度変動億比較的大きく、中国や日本などの発生源から長距離輸送されて着ていることが分かる。また、VOCについても人為起源のエタンなどの濃度は前線の通過とともに急激に増加する変動をしており、輸送の影響が強いごとが分かる。一方、クロロフルオロカーボンなどのオゾン層破壊物質については安定した濃度となっていた。船上でのサンプリングは緯度方向の濃度変動を捉えることができ、低緯度で濃度がひくく、中緯度で高濃度とはっきりとした濃度勾配をとらえることが出来た。
|