本研究は、大気中におけるエアロゾルの新たな生成初期過程の解明を目的に、時間分解型キャビティーリングダウン分光法(TR-CRDS)を用いて硝酸ラジカル(NO_3ラジカル)と自然起源含ヨウ素化合物であるヨウ化アルキル類の反応の測定を行うものである。NO_3ラジカルは夜間の大気酸化過程において最も重要なラジカルであると考えられているが、ヨウ化アルキル類との反応に関する報告はこれまでにほとんど無い。このような、今まで考慮されなかったヨウ素化合物の夜間における酸化反応を調査することによって、大気中のヨウ素循環やエアロゾルの生成過程を解明することを目的としている。平成18年度においては、ヨウ化アルキル類のうちジヨードメタン(CH_2I_2)に対して、NO_3ラジカルとの反応測定をTR-CRDS法を用いて行った。その結果、NO_3+CH_2I_2の反応速度定数が25℃の100 TorrのN_2バッファー下において、(4.0±1.2)×10^<-13>cm^3 molecule^<-1>であることを決定することができた。この結果を用いることにより、NO_3ラジカルとCH_2I_2の反応が夜間大気中の反応性ヨウ素化合物の生成、しいては大気中エアロゾル生成や地球温暖化に重要な影響を与えている可能性があるということを示唆することができた。以上の研究成果は、ELSEVIER社が出版している学術雑誌であるChemical Physics Lettersに投稿し、すでに掲載されている。
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