本研究は、炭素電極を用いた電気化学測定法によるマングローブ林の底泥間隙水・直上水のFeおよびMn錯体検出を目的に、pHや塩濃度による影響および現場サンプルを用いた測定を行なった。 MnはpH55からpH6.0に至るまで還元波ピーク電位はプラスからマイナスへ移行し、pH6〜8では、電位の大きな変化は見られず、-0.05V付近であった。pH8以上になると電位はマイナス側に移行する傾向が見られた。塩化ナトリウムの増加につれ、Mn還元波のピーク電位が徐々にプラス側に移行する傾向が見られた。海水と同濃度の塩化ナトリウム濃度と塩化ナトリウムなしでは、電位差が約0.07V(pH6.4-6.2)あった。Feは、塩化ナトリウムが増加するにつれ、Fe還元波ピーク電位はマイナス側に移行する傾向が見られた。海水とほぼ同様の塩化ナトリウム濃度と塩化ナトリウムなしでは、電位差が約0.09V(pH2.4)あった。 上記の塩濃度・pHによるMn・Feの電気化学測定法による検出特性結果を基に、マングローブ林底泥直上水について測定した。その結果、+0.19Vの位置に還元波が見られた。直上水はpH7.0であり、塩分1.2%であった。塩分1.2%のMn由来還元波は+0.11V、pH7.0では-0.05Vであり、それらと比較しても+0.19Vはプラス側に位置した。さらに、底泥間隙水に3×10^<-6>Mの塩化マンガンを添加した際に+0.19Vにピークが見られた。本実験のpHにおける塩化マンガンの還元波電位は、マイナスに位置することがわかっており、これらの結果から、マングローブ底泥直上水には、他の配位子と結合したMn錯体が含有すると考えられた。また、本錯体は淡水から汽水、海水のpH領域で安定して検出されることから、河川および沿岸海域で安定して溶存する可能性が考えられた。
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