研究概要 |
本研究では、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)を含む6種類のジアルケン類の光酸化実験で生成する二次有機粒子の組成分析から、イソプレンの光酸化で生じる二次粒子の生成機構を明らかにすることを目的としている。特に本年度については、イソプレン、1,3-ブタジエン、及び2,3-ジメチル-1,3-ブタジエンを前駆炭化水素として用いることにより、二次粒子生成に対するジアルケン類のメチル側鎖の効果を明らかにすることを目的とした。すべての実験は、5ppmvの炭化水素および1ppmvの窒素酸化物を空気中に混合した試料に、キセノンランプの光を3時間照射して行われた。二次粒子の収率は生成した粒子の濃度に依存することが知られるが、本研究で測定されたイソプレンからの二次粒子の質量収率は、約400μg毎立米の質量濃度の粒子が生成したときに3%であり、以前に報告された結果を再現した。3時間の光照射で生成した二次粒子の収率は、ブタジエン(6%)で最も高く、ジメチルブタジエン(2%)で最も低かった。結果から、ジアルケン類のメチル側鎖は、光酸化で生成する二次粒子収率を抑制することが示唆された。液体クロマトグラフ-電子スプレーイオン化型質量分析計を用いて陰イオン化モードで試料の分析を行った。生成物として、分子量が1000以下のオリゴマー分子や、分子量が200以下のポリアルコール分子が検出された。ブタジエン、イソプレン、及びジメチルブタジエンの生成物の質量スペクトル中では、それぞれ105、119、及び119の質量電荷比を持つイオンの存在率が最も高かった。105及び119の質量電荷比を持つイオンはポリオール類からの擬分子イオンに仮同定された。次年度に行われる前駆体の炭素鎖の長さを変える実験から、本年度に得られた組成の仮同定を検証し、ジアルケン類から二次粒子生成の全体像を明らかにする予定である。
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