研究概要 |
最近の研究から、イソプレンの酸化で生成する2-メチルテトロールが大気中の二次有機エアロゾル生成に寄与すると言われている。しかし、このポリオールの生成に関わる反応機構は十分には理解されていない。イソプレンや1,3-ブタジエン等のジアルケンの光酸化で生成する二次有機エアロゾルの組成の分析を通して、特にジアルケンからのポリオール類の生成に関わる酸化機構を調べることを本研究の目的とした。本研究では、NO_x存在下における6種類のジアルケン(1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、2,4-ヘキサジエン、1,4-ペンタジエン、および1,5-ヘキサジエン)の・光酸化を室内チャンバー実験によって調べた。生成する二次有機エアロゾル(SOA)の水溶液に含まれるポリオール、有機酸、および硝酸を、イオン排除型液体クロマトグラフ-質量分析法によって分析した。イソプレンの実験でば、2-メチルテトロール(SOAの0.5-2wt%)、メチルニトロオキシブタントリオール(SOAの1-7wt%)、メチルジニトロオキシブタンジオール(SOAの0.3-8wt%)、および硝酸(SOAの4-9wt%)が、SOAの水溶液中に見つかった。抽出の3日後には、ニトロオキシポリオール(即ち、メチルニトロオキシブタントリオールおよがメチルジニトロオキシブタンジオール)の濃度は減少し、逆にポリオールと硝酸の濃度は増加した。同様の結果が、6つ全てのジアルケンの実験で得られた。実験結果は、NO_x存在下のジアルケンの気相光酸化ではニトロオキシポリオールが生成してSOAの生成に寄与し、ニトロキシポリオールは水溶液中で分解してポリオールと硝酸を生成することを示している。水溶液中に存在するポリオールと硝酸は加水分解の生成物であり、本当のエアロゾルの成分ではない。ジアルケンの酸化における気相の反応プロセスによるポリオール生成はNO_x存在下では抑制されると考えられる。
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