研究概要 |
本年度は,三次元森林放射伝達モデルの数式的な定式化・コード化及び,モデル検証の為のデータ収集及びデータ収集を行った。コード化したモデルは,大気の放射過程や中性子輸送過程の計算に使用されている輸送モンテカルロ法を軸としてモデル化を行った。開発したモデルには,Forest Light Environmental Simulator(FLiES)という名称を付けた。このモデルは,森林からの分光反射率の計算の他,森林の反射率の空間分布(疑似衛星画像),樹冠に吸収される光合成有効放射,林床に入射する下向き照度も算出できる。また,モデルには一次元大気の放射伝達モデルが結合されており,放射伝達計算を大気上端から行えるようにした。この結果,様々な大気シナリオの中で,森林の中の光環境を3次元的に評価できるようになった。モデルは,他の大気放射伝達モデルや三次元植生放射伝達モデルとの相互比較を行い,同程度の条件で計算する場合,おおむね既存モデルに近い計算結果が得られることがわかった。 また,本年度導入した,携帯型分光計(MS-720)を用いて野外の分光反射率データの収集を行った。当初はアラスカ大学との協力の下に野外観測を実施する予定であったが,限られた予算と時間で効果的にデータを集めること,また将来アジア地域の植生観測への応用を考え,アジアの中緯度に存在する草原を第一の検証データサイトとして選択し,現場においてバイオマス,分光反射率,葉面積指数の観測を行った。
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