平成21年度は、相模湾・初島沖の海底(水深1100m)と、インド、アラビア海の酸素極小層直下の海底(水深809mと1160m)において、酸素濃度の二次元プロファイルの観測をそれぞれ行い、堆積物-水境界における酸素濃度の時空間変動を観測した。測定時間は初島沖で10日、アラビア海はそれぞれ19時間である。アラビア海では、5μM以下という酸素濃度を測定するために新たに開発した超高感度二次元酸素センサを開発した。海底直下の酸素濃度は初島沖の海底直下で焼く52μM、アラビア海では809mの海底直下で1.5-4.0μM、1160mで21.5-27.0μMで、時間によってそれぞれ変動することが分かった。この変動は潮汐周期に連動しており、潮汐で駆動される流れが、より深い場所からの海水が上下する動きを作り出していることが明らかになった。相模湾の堆積物は、表層5mmまでは小型のゴカイや介形虫によって常に撹乱を受け、酸素は深さ4-6mmまで拡散しているが、アラビア海水深809mでは、水中の低い酸素濃度のため、酸素は1-2mmしか拡散しないが、エビや等脚類と考えられるベントスが、突発的に深さ20mm程度の大きな撹乱を起こすことが分かった。一方水深1160mでは、生物撹乱による酸素の浸透は見られなかった。相模湾の海底には、酸素が検出されない深度(深さ1-2cm以深)で底生有孔虫が活発に活動していた。これは平成19年の観測においても確認されたことから、相模湾では、メイオベントスの活動が海底の物質循環に大きく寄与していることが考えられる。一方アラビア海の海底では、このような有孔虫の活動は見られなかった。以上のことから、酸素の乏しい海底環境にも、メイオファウナを含むベントス活動、酸素濃度の違いにより様々なパターンが存在することが示唆された。
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