研究概要 |
本年度は、重金属類および有機物の特性評価手法の確立と、晴天時の都市由来有機物と重金属類の調査を行った。重金属は亜鉛と銅に主として着目した。 重金属類および有機物の特性評価手法の確立においては、過去に用いてきた0.5μmの膜での分画による懸濁態・溶存態の分離、キレート樹脂法による不安定(labile)態の定量に加え、限外ろ過膜による分子量10,000、1,000、500での分画も合わせて行い、さらに新規購入したボルタンメトリー法のオンサイト元素分析計による不安定態の定量も行うことが可能となった。手法の検討においては、膜への吸着や膜由来のブランク値にも細心の注意を払い、最適な膜の洗浄(コンディショニング)手法を確立した。 これらの手法を用いて、都市下水処理場の晴天時処理水(塩素処理後)を対象に一年間に3回の調査を実施した。下水処理水中の不安定態亜鉛は、キレート樹脂法を用いた場合には13〜25%であった。分子量分画の結果からは、この不安定態亜鉛の33〜51%が、分子量1,000以上や10,000以上の画分に存在しており、弱い錯形成をする高分子量のリガンドが存在することが示された。分子量500以下の画分に含まれる不安定態亜鉛は、全亜鉛中の0.0〜1.4%、不安定態亜鉛全体の0.0〜5.4%であった。不安定態の重金属のうち、特にフリーイオンとして存在しているものは、生物への毒性に大きく寄与すると考えられているが、下水処理水の場合にはキレート樹脂法での不安定態の定量値とフリーイオン濃度には大きな差があることが示唆された。さらに、ボルタンメトリー法を用いて下水処理水を分析した結果、亜鉛は検出されず、処理水中にはフリーイオンとしての亜鉛はほとんど存在しないことが明らかとなった。
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