重金属類は、過去に深刻な公害事件を引き起こした汚染物質であるが、現在も産業的価値の高さから多方面の素材として使用され、その生産量は増加の一途をたどっている。産業的価値の根拠となる様々な物理化学的性質にとどまらず、生体内においても普遍的に存在し、一部の元素は生命活動に不可欠な必須元素として機能している。自然界で多様に存在する生物の中には、特定の金属類を異常とも言える高レベルで濃縮する種が存在するが、その詳細は未解明と言える。 本研究は、野生生物にみられる金属濃縮現象において吸収、蓄積、排泄および解毒のコンパートメントに注目し、蓄積メカニズムの解明を行うと共に、耐性機構を含めた潜在毒性の評価、生態影響への適用へ関連付けることを上位目的としている。 本年度は、とくに植物においてはカドミウムに注目し研究を行った。その結果、マメ科のタヌキマメにカドミウム濃縮・耐性品種と、感受性(毒性が出やすい)種を見いだし、その体内における金属結合タンパク(PC)やリグニン含量が特徴的に変化することを明らかにした。 動物ではマングースの水銀およびスリランカの魚類における超微量元素の蓄積を中心に解析を行った。その結果、前者は成長に伴う蓄積上昇や、組織特異的な濃縮を明らかにし、後者は採取された6地点を特徴付ける元素組成の存在を明らかにした。つまり、ジャワマングースの毛における水銀排出能が海生哺乳類と類似していることを明らかにし、スリランカの水域には大きく2パターンの元素組成を示す汚染が存在すること(銀・カドミウムパターンとヒ素・水銀パターン)を示唆し、さらに各水域にも汚染を特徴付ける元素が存在することを明らかにした。 これらの知見は、大きくは、未だ発見されていない金属類の濃縮種やメカニズムの存在を示唆し、ミニマムには、種以下(品種や個体群)に特徴的な濃縮機構が存在する可能性を示していると結論された。
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