東アジアにおける酸性雨の生態系への影響評価に資するために、当該地域における酸性・酸化性物質の乾性沈着を精度よく推計できる沈着速度のパラメタリゼーションを開発した(大気環境学会誌第43巻第6号掲載)。 開発されたパラメタリゼーションを用いて、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)の国内測定地点において乾性沈着を推計した。当該計算には、EANET局で測定されている気象データを入力値として各成分の沈着速度を求め、大気濃度データとの積により硫黄(二酸化硫黄、粒子状SO_4^<2->)および窒素(ガス状硝酸、アンモニア、粒子状NO_3^-、粒子状NH_4^+)の乾性沈着を推計した。さらに、推計された乾性沈着に湿性沈着を合わせて総沈着量(酸性沈着)の評価を行った。総沈着量の分布は、硫黄と窒素で同様な傾向が見られ、本州および沖縄で多く、北海道(利尻)、小笠原で少なかった。沈着表面を森林として乾性沈着を推計した場合、湿性沈着と乾性沈着は概ね同レベルであり、草地として推計した場合、湿性沈着が乾性沈着よりも大きい傾向がみられた。窒素沈着において、アンモニアの総沈着量は硝酸の総沈着量と同レベルであった。 本研究の成果発表及び開発された手法の東アジアでの普及を目的として、平成21年2月18日、明星大学にて国際ワークショップ「Workshop on Atmospheric Deposition in East Asia」を開催した。タイ2名、マレーシア1名の海外参加者を含む20名を超える研究者の参加を得た。大気沈着および越境大気汚染に関する11件の研究発表がなされ、活発な議論がなされた。
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