研究概要 |
本研究は,ダム下流域における効果的な生態系保全をめざして,河川底生動物群集の変化,中でもキーストーン種と考えられるマダラカゲロウ科の分布をダム上流からダム下流にかけて明らかにし,その分布変化と各環境への反応の一般化をめざすものである。平成19年度の本研究では,18年度の研究結果を踏まえて,複数河川から得られた膨大なデータから統計モデルを構築した。また,新たに砂礫供給量の少ない河川流域にて野外調査を行い,底生動物群集およびマダラカゲロウ科の野外における分布と,それらを強く規定する環境因子を抽出した。 (1)昨年度調査した複数のダム河川流程における,生息する底生動物群集と環境要因の関係についてマダラカゲロウ科をはじめとした,各底生動物群集についてそれのダム下流河川での分布を推測する統計モデルを構築した。このモデルにより,河床材料組成および流下物有機物量が底生動物群集の分布の予測に重要であることが示された。また,他の環境要因についても,どの程度予測モデルに寄与するかについて検討した。この結果は今後,ダム下流での環境評価をする際に調査すべき環境要因を決定するのに有用なモデルになりうると考えられる。現在このモデルについて,他のダム河川流程においても適応できるかについて検討中である。 (2)高知県のダム河川を対象にして,砂礫供給量の少ない河川流域にあるダム河川における底生動物群集およびマダラカゲロウ科の野外における分布と,それらを強く規定する環境因子を抽出した。このサンプルについては分析中である。
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