研究概要 |
本研究は,ダム下流域における効果的な生態系保全をめざして,河川底生動物群集の変化,中でもキャストーン種と考えられるマダラカゲロウ科の分布をダム上流からダム下流にかけて明らかにし,その分布変化と各環境への反応の一般化をめざすものである。平成20年度の本研究では,19年度までの研究結果を踏まえ,砂礫供給量が大幅に異なる複数河川から得られた膨大なデータから統計モデルを構築した。 18年度からこれまでの3年間で調査した複数のダム河川流程における,生息する底生動物群集と環境要因の関係についてマダラカゲロウ科をはじめとした,各底生動物群集についてそれのダム下流河川での分布を推測する統計モデルを構築した。ダム下流では土砂供給が阻害され、底生動物の生息場所に大きな影響を与えることがこれまでの成果から判明している(Katano et al. 2009 in J-NABS)。よって、特に生息場所の土砂量に着目したモデルを構築して、そこからマダラカゲロウなどの底生動物を使った指標種抽出を行った。モデルは、データセット内にある各ダム間やサイト間での複雑な背後関係を考慮すべく一般化線型モデルを用いて行った。その結果、マダラカゲロウ科は土砂だけでなくさまざまな環境要因の変化の影響を反映していることがわかった。シジミやヤマトビケラなどの種類が、ダム下流の土砂動態の指標種として重要であった。今後はマダラカゲロウのようなダム下流の環境変化全体を反映する種と、土砂動態の変化など特定の環境変化に対応する種類に着目して、調査・保全計画立案を立案することが求められる。
|