平成3年をピークに観光客が減少している十和田湖休屋地区(十和田八幡平国立公園)においてバトラーモデルを適用し、観光業の盛衰要因を考察した。その結果、『乙女の像』(1953年)の建設や、交通網の整備が訪問者の増加に大きな影響を及ぼしてきたといえる。急増する団体客に対して、地元住民は増改築や違法民泊で対応してきた。一方、ヒメマス以外の主要な特産物開発は進まず、ヒメマスについても湖水の汚染によって漁獲量が減少した。地域の魅力を維持・増大させる抜本的な議論が十分なされないまま、長年にわたって個々の事業者が自らの営利を追求したことが、十和田湖全体の魅力低下につながったということが判明した。 八幡平地区については、登山道や道路の開発が観光業・公園管理に与えた影響について、ROSという視点から調査した。その結果、アスピーテラインなどの道路開設により、開設後しばらくは大量の観光客流入があったものの、一方で、原生的なレク体験の消失(景観破壊、原生的な地域ほど多くの人が入る)という問題点を引き起こした。 白神山地については、昨年度から引き続いてフィールド調査を実施し、青森県西目屋村暗門地区におけるエコツーリズム事業の実態や、青森県深浦町十二湖の観光客がもたらす経済・環境インパクトを把握した。 この他に、2001年に世界自然遺産に登録されたブラジル・シャパーダ国立公園を現地調査した。海外援助により、国立公園の管理体制支援(管理計画や、1日当たりの訪問人数の上限の設定、標識・看板の整備など)が進むとともに、世界遺産登録後に観光客数は順調に成長していることが判明した。ただし、管理に伴う費用が潤沢に確保されておらず、長期的な課題が存在していた。
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