平成20年度は、十和田八幡平国立公園を対象とした研究成果の一部を日本造園学会ミニフォーラムで発表し、道路建設が原生地域を縮小させたことや、持続的な観光における管理計画の必要性を明らかにした。またInternational workshop on better management of world natural heritageで屋久島の観光開発の展開を発表し、世界自然遺産登録後に観光客が急増したことで、屋久島の住民が混雑感や自然環境の悪化を実感していることを明らかにした。 フィールド補足調査に関しては、十和田八幡平国立公園において、登山道や道路の開発が観光業・公園管理に与えた影響について、ROSという視点から補足調査を行った。また、白神山地では秋田県藤里町の公的機関に聞き取り調査を行ったところ、屋久島と比較して維持管理費用が遺産登録後に急増していないことを明らかにした。 これまでの研究成果を取りまとめたところ、地域資源を活用した農山村・保護地域における持続可能な観光を展開するためには、地域資源を持続的に活用するための計画がボトムアップ型で十分練られていることが重要であることがわかった。特に自然資源の利用に関する計画が十分練られていない場合には、過剰利用や混雑現象の発生により、資源価値が減少する可能性が高いことを、鹿児島県屋久島や十和田八幡平国立公園の事例は示していた。この他に日本の国内旅行に関しては、旅行代理店が集客力・ツアー内容に深く関与しており、それがエコツアーなどにツアー時間の短縮などの影響を及ぼしていた。今後は、地域側の発言権をより認める形での認証制度の導入などが必要と考察した。
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