海洋保護地域(MPA)が設定されているソロモン諸島ウェスタン州ロヴィアナ地域を対象に、前年度に引き続き5月、7月に調査を行った。身体計測など健康調査に加え、小型GPSと心拍計を用いた活動追跡を実施した。日本では、過去(2001年)から現在までにロヴィアナで収集してきたデータを分析した。 1.前年度から継続して、海洋保護(MPAの設置)を受け入れた5村(NH、K、B、0、D)と、受け入れいれていない1村(NB)で横断的比較をしたところ、海洋保護はエネルギー・栄養素摂取に悪影響を及ぼさないことが示唆された。逆に、保護されることにより、海洋生態系が微生物相や魚類個体群が活性化されていることが確認され、保護地域外でも魚が多数化・大型化していることが示唆された。また、社会的、経済的、生態的条件が、村間差をつくっていることも示唆された。 2.GPSによる活動追跡から、MPAでの漁撈活動ができない住民は、従来よりも遠い漁場で生業活動に従事することがわかった。しかし心拍計の分析から、成人ではカヌーを漕いで移動するときの活動量は、安静時と比べても上昇は小さく、活動エネルギー消費量は日常活動と比べても大差ないと推測された。 3.また、同調査地域は2007年4月にM8.1の地震と津波に襲われ、海洋生態系と生業・経済基盤を破壊された。しかし住民の多くは、海洋保護の重要さを認識しており、継続した保護活動が営まれていた。
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