今年度は最終年であり、前半は比較対照としてオーストラリアの調査とその整理、そして、後半に全体のまとめを行った。 前半のオーストラリアでの調査は、成功例としてしばしば引き合いに出されているオーストラリアでの成功要因を抽出するとともに、課題をも明らかにすることを予定していた。しかし、実際に調査に入ってみると、これまで読んできたいくつもの資料と全くことなり、これまでに調査を行ってきていたフィリピンを同様の、民主的な開発手続きの失敗と被害の蔓延に直面した。したがって、研究計画を変更しなければならない事態となり、研究の落としどころとして、途上国のみならず先進国でも克服できない資源開発のディレンマを浮き彫りにするに留めた。この結果、研究計画で予定していた持続可能性の構築に必要な具体的要素を提示することができなかったのは残念である。 後半では、これまでの研究、特に事例を整理し、民主化を阻害し、ひいては開発をも阻害する資源開発特有の要因として、従来の不安定価格と税収だけでなく、広範囲な合意形成の不可能性に焦点を当て、新たな「資源の呪い」現象の説明を試みた。 本研究結果は、もし、十分な正当性を得られるのであれば、これまでにない画期的な「資源の呪い」現象の説明となり、また、資源開発の開発政策での位置づけも大きく変更せざるを得なくなる。今後、本研究の成果を積極的に広め、修正しつつ、社会へと貢献させていく所存である。
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