研究概要 |
本研究は,音環境を「風景」と捉え,音環境の経験の歴史性・地域性に注目して,良好な音環境を保全するためのマネジメント手法について考察しようとするものである。具体的には,事例調査結果に基づき,地域住民が音環境について述べる言説を分析することで,音環境の経験の地域性の表れ方について検討をおこなう。 平成19年度は,平成18年度に引きつづき,京都市の伝統的織物産業地域における既往の調査結果を用い,産業音に対する地域住民の感性や社会規範について考察を進めた。この地域では,産業音は騒音であるとともに地域を象徴する存在となっており,住民を対象とした自由記述質問紙調査結果においては,産業音について否定的な評価がなされる一方で,肯定的評価や受容の記述がみとめられた。受容の理由としては,物理的な理由とともに,社会的な理由が記述された,このことから,地域の社会的背景や住民の相互作用から産業騒音を受容する地域文化が形成されていることが窺われ,地域音環境管理に地域の文化的・社会的背景を反映させる必要があることが示唆された。 また,前年度から継続して,上記の京都市の事例地と山梨県南巨摩郡内を事例地とした調査を実施した。事例地における聞き取り調査のほか,地域特性に関する情報収集と整理をおこなった。このほかに,音環境マネジメントに関する理論的な考察をおこなうために,ランドスケープ研究,環境社会学等の関連分野の文献の調査を進めた。
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