我々の社会における物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどの程度の物質が社会に蓄積され、将来資源としでの再活用が可能で、もしくは有害性を呈するのかを明らかにする必要がある。研究実施者は、Material Flow Accounts(MFA)に対応するものとしてMaterial Stock Accounts(MSA)を提案しているが、本研究では、物質ストックのほとんどを占める建設物を取り上げ、(1)社会における物質ストックの定量化手法を複数開発してこれを適用し、MSAの体系およびその実施可能性を検証するとともに、(2)人口減少なども加味しつつ将来シナリオの分析を行い、資源性、有害性の観点から建設資材に関わる中長期的な物質管理戦略について分析することを目的としている。 18年度は、物質ストックの定量化、将来シナリオ分析のための基礎情報として、建設物のストック量、建材の生産量、廃棄量等に関する資料(主として統計資料)、建設物の寿命に関わるデータや文献を収集、データベース化した。建設物の寿命が長いことに鑑み、建材の生産量については、1950〜60年に遡ってデータを収集し、一部健在向けの量を推計した。具体的には、今後の健在廃棄物質理上焦点となりうるもの(建設廃棄物に含まれる少量雑多な建材)として、防腐処理木材、石綿製品、繊維板、石膏製品、金属製建具、プレハブ建築用パネル、板ガラス、陶磁器などを対象としている。また、主要な資材としての建設鉱物(砕石、岩石、セメント)を対象に、潜在的な廃棄物重について事例的に検討した。来年度以降、少量雑多な建設資材に同様の考え方を適用する予定である。
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