我々の社会における物質ストックを有効に活用するためには、具体的にどの程度の物質が社会に蓄積され、将来資源としての再活用が可能で、もしくは有害性を呈するのかを明らかにする必要がある。研究実施者は、Material Flow Accounts (MFA)に対応するものとしてMaterial Stock Accounts (MSA)を提案しているが、本研究では、物暫ストックのほとんどを占める建設物を取り上げ、(1)社会における物質ストックの定量化手法を複数開発してこれを適用し、MSAの体系およびその実施可能性を検証するとともに、(2)人口減少なども加味しつつ将来シナリオの分析を行い、資源性、有害性の観点から建設資材に関わる中長期的な物質管理戦略について分析することを目的としている。 19年度は、18年度に整備した建材の生産量(木材、防腐処理木材、セメント、セメント型品、石綿製品、繊維板、石膏製品、金属製建具、プレハブ建築用パネル、板ガラス、陶磁器など)のデータと、資材利用原単位から推計されるこれらの量を比較し、原単位の妥当性の検討および建材向け利用量の推計を行った。また、これをもとに、過去から現在にわたる建材の蓄積量、廃棄量を推計した。多くの物質について、廃棄量の推計値と、これに対応すると想定される建設廃棄物の統計値との間に乖離が見られた。この乖離は、対象物質の違いによるもの、非潜在廃棄物によるもの、リサイクルによるものが考えられるが、現時点ではこれを検証できる十分なデータがない。さらに、人口、建築ストック量、建築寿命をベースに将来の建築解体量、需要量を推計するモデルを作成した。
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