ヌクレオチド除去修復反応におけるクロマチン構造変換機構とDDBの機能を明らかにするために、以下の点について解析を行った。 まず、ATP依存性クロマチンリモデリング因子の修復反応への関与について検討するために、局所的紫外線照射法により正常細胞の核の一部にDNA損傷を誘起し、蛍光免疫染色によりSWI/SNF複合体のサブユニットの局在性を解析した。しかし、ヌクレオチド除去修復の基本修復因子やDDBとは異なり、DNA損傷部位への集積は観察されなかった。また、ヌクレオチド除去修復を欠損した種々のXP細胞およびDDB2を強発現することにより修復能を亢進させた正常細胞を用いて同様に検討したが、DNA損傷部位に集積することはなかった。 また、DDBの機能を明らかにするために、ニワトリDT40細胞を用いて作成したDDB1のコンディショナルノックアウト細胞のDNA損傷応答について解析を行った。まず、ヌクレオチド除去修復能について調べたところ、DDB1の欠失により(6-4)光産物の修復に遅れが見られたが、シクロブタン型ピリミジン二量体の修復に変化は見られなかった。また、ヌクレオチド除去修復以外のDNA損傷応答に関与する可能性について検討するために、DNA損傷を誘起させた後の種々のチェックポイント関連因子の量的および質的な変化を解析した。その結果、DDB1の欠失により紫外線照射後のChk1タンパク質の量が変化することはなかったが、345番目のセリンのリン酸化がDDB1欠失時に弱く、その消失も早かった。また、エトポシド処理によるChk1タンパク質のプロテアソーム依存的な分解が報告されていたが、DDB1欠失時では、その減少が有意に低下することがわかった。したがって、DNA損傷の種類によって反応は異なるものの、DDB1がChk1の制御に関与している可能性が示唆された。
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