研究概要 |
交感神経が放射線高感受性の要因の一つであることを証明するため、ノエルピネフリン(NE)のラット回腸上皮細胞(IEC-18)における放射線照射後の生存率とアポトーシスへの効果を調べた。 方法:1.IEC-18に0〜1μMのNEを添加し、8Gy照射後のコロニー形成能を調べた。2.NE1μM投与群と非投与群の8Gy照射後6時間のTUNEL染色によるアポトーシス陽性細胞の割合を調べた。3.α1アドレナリンレセプター(AR)遮断薬のプラゾシン、α2AR遮断薬のヨヒンビン、βAR遮断薬のプロプラノロールをそれぞれ5μM投与した培地に、NE1μM投与後8Gyの照射を行い,コロニー形成能を調べた。4.8Gy照射後3時間のNE投与、非投与、プラゾシン及びNE投与、プラゾシン投与細胞のActive caspase3の発現をウェスタンブロット法にて調べた。 結果:1.NE投与後のIEC-18の細胞生存率は、1μM以上で急激に用量依存的に低下し、NE投与のみで生存率が低下することが示された。NE1μM投与群の非照射の生存率は88%に対し、8Gy照射後のNE1μM投与群の生存率は27%と有意に減少した(p<0.05)。2.8GY照射後6時間の非投与群のアポトーシスの割合は3.5%に対し、NE1μM投与細胞は6%と有意に増加した(p<0.05)。3.プラゾシン、ヨヒンビン投与群では、非照射での生存率が非投与群に比べ増加し、NEによる生存率の低下を抑制した。プロプラノロールの生存率への影響は見られなかった。8Gy照射後、プラゾシンとNE投与群はNE投与群に比べ、生存率の増加傾向が見られた。4.NE投与群は8Gy照射後Active caspase-3の発現の増加が見られたが、プラゾシンとNEを投与した細胞ではその発現が抑制された。NEは放射線高感受性に働き、その経路にα1ARを介している可能性が示唆された。
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