骨盤内悪性腫瘍に対して用いられる放射線治療の副作用の一つとして、放射線腸炎が知られている。その治療薬について未だ効果的な薬剤は見つかっていない。我々は交感神経機能が亢進状態にある高血圧自然発症ラットの放射線感受性は正常ラットよりも高いことを報告している。交感神経機能亢進状態が放射線高感受性に関与していることをin vitroで明らかにするため、ラット回腸上皮細胞IEC-18のノルアドレナリン(NE)投与後の放射線感受性を、コロニーフォーメーションアッセイを用いて調べた。 NEは8 Gy X線照射後IEC-18のアポトーシスを促進し、細胞の生存率を低下させた。α1アドレナリンレセプター(AR)遮断薬のプラゾシン投与は8Gy照射後のNEによる生存率の低下を抑制した。また、NEによる照射後のActive caspase-3の発現増加もプラゾシン投与で抑制されたことから、NEの放射線誘発アポトーシス促進経路にα1アドレナリンレセプターが関与している可能性が示された。一方α2アドレナリンレセプター遮断薬のヨヒンビンとβアドレナリンレセプター遮断薬のプロプラノロール投与は、NEによる照射後の生存率の低下を改善しなかった。さらに、プラゾシン5μM投与細胞の8Gy照射後生存率は非投与に比べ1.7倍高かった。これらの結果は、α1アドレナリンレセプター遮断薬の急性放射線腸炎の治療薬としての有用性を示唆している。
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