研究課題
我々はマウスを使った実験で、放射線が直接的に突然変異を誘発する意外にゲノム不安定性を誘導し、これが2次的に突然変異を誘発する可能性をメラニン合成系に関与するpink-eyed dilution(P)遺伝子を指標に検証した。実験の結果、照射を受けた雄マウスから生まれた次世代マウスでは父親由来の遺伝子座のみならず、照射を受けていない雌由来の遺伝子座においても突然変異頻度上昇が観察された。さらに、DNA損傷は精子に由来するものであるのに、その変異は体細胞中で生じていることも示された。これらの知見から、照射精子が卵子にDNA損傷を持ち込むことで、受精卵内でゲノム不安定性を誘発し、これが雌由来の非照射ゲノムに作用して継世代での非標的突然変異を引き起こすことが明らかにされた。さらに精子形成時期各段階での照射への影響を調べた。これらの結果から、照射精子の誘導する次世代マウスに見られる遺伝的不安定性は精子期照射でのみ観察され現象である事が示された。またp53遺伝子欠損マウスを用いた実験により、この遺伝的不安定性誘導にはp53遺伝子が必要であることが示唆された。
すべて 2007
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Radiation Risk Perspectives 1299
ページ: 242-247