無修飾のC60について生体試料を対象試料とした液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析法(LC-MS/MS)を用いた高感度分析法および、in vivo系での投与試験を想定した生体試料からの抽出を含む前処理法を検討した。LC-MS/MSのMSDの条件については、大気圧化学イオン化法(APCI)のネガティブイオンモードで測定し、モニターするプレカーサイオン、プロダクトイオンはともにC60ではm/z=720、C70ではm/z=840であった。また、コーン電圧はC60、C70ともに120V、コリジョンエナジーはC60、C70ともに60eVとした。本研究で用いた条件によるC60の定量下限値は20μg/Lであった。HPLCの条件については、移動相にトルエンとアセトニトリルを、分離カラムにC30系逆相カラムのDeveosil RPFULLERENEを用いた場合においてトルエン:アセトニトリル=70%:30%の条件ではピーク形状がシャープかつ分離が良好となり、さらに保持時間も20分以内にC60、C70が溶出した。 C60を投与した実験動物の組織からの抽出を想定し、マウスの肝臓と脳を用いて、C60の添加回収試験を行った。各組織50〜150mgにC60のトルエン溶液(1mg/L)を0.5mL、0.01MのSDSを0.5mL添加し、ホモジナイズする。その後、ホモジネートを遠沈管に移し、トルエン5mLで振とう抽出した。脳、肝臓ともにMRMクロマトグラムにおけるC60のピーク形状は良好であり、共雑物質等による妨害ピーク、C60のピークへの干渉は観察されなかった。また、C60の回収率は、脳では94.6%、肝臓では85.2%と良好な結果が得られ、本研究で用いた抽出処理によってC60は十分組織から抽出できることが明らかとなった。回収率補正のサロゲート物質として用いることを想定しているC70について、C60と同様に肝臓、脳に添加し、添加回収試験を行った。C70も良好な回収率(82.0%(脳)、96.0%(肝臓))を示し、ピーク形状は良好で共雑物質等による妨害ピークやC70のピークへの干渉等は認められなかった。C70について良好な結果が得られたことから、C70を用いてC60の回収率を補正すると、脳が115%、肝臓が88.8%となり、C70をサロゲート物質として用いることで、組織からのC60の回収率を補正することが可能であるといえる
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