研究課題
本研究ではC60を溶解させた他の投与溶液をマウスに腹腔内投与して体内分布を調査できる投与条件を検討し、採用した投与条件における体内分布、組織中C60濃度を調査した。実験動物への投与溶液の調整については、C60の溶解度、実験動物におけるLD_<50>値を考慮し、1-メチル-2-ピロリドン、1-オクタノール、ヘキサンについて検討した。その結果、C60の溶解度については3種のうち1-メチル-2-ピロリドンが最も高濃度であり、その濃度は約800mg/Lであった。また、1-メチル-2-ピロリドンについて実験動物への影響を調査した結果、マウスを用いた腹腔内投与の場合1.92μ1/g body wtで死亡するなどの影響は認められなかった。上記で検討したC60の1-メチル-2-ピロリドン溶液を用い、C57BL/6CrSlc雄8週齢のマウスに腹腔内投与試験を行った。その結果、C60は投与群10検体のうち7検体から検出され、検出された臓器は脾臓、肝臓、腎臓であり、その他の臓器(脳、肺、血液)については検出されなかった。C60が検出された肝臓、脾臓については7検体全て、腎臓については1検体から検出され、検出された3臓器のうち、脾臓中C60濃度が最も高く、最高値で8058ng/g湿重当りであった。脾臓中のC60濃度が高く、その負荷量が多いことから、体内に取り込まれたC60が脾臓のマクロファージによって食食されたことが考えられたが、投与したC60が、脾臓の膜表面に吸着している可能性も考えられたため、今後は、投与方法を腹腔内投与から経口投与に変更し、C60の挙動について調査を行う予定である。本研究の意義、重要性については、フラーレン類について、機器分析から、in vivo、系投与試験、影響評価試験までを調査研究した例は皆無で意義深い。また、フラーレンの存在量と毒性影響の関係を詳細に調査できる点にも重要性がある。
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