研究概要 |
近年、ダイオキシン類による生態系への悪影響が懸念されており、その分解・無害化技術の開発が望まれている。そこで本研究では、ダイオキシン類の中でも最も毒性の高い2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-pジオキシン(2,3,7,8-TCDD)に着目し、その分解を超音波照射により行った。 試料体積を100mL、TCDD初期濃度を20ng/Lとし、pH:2-10、超音波(US)出力:0-150W(20kHz)、反応温度:10-40℃と変化させ2,3,7,8-TCDDの初期分解に与える影響を調べた。また、US/Fe(III)/UV系における2,3,7,8-TCDDの分解についても検討した。 超音波照射による2,3,7,8-TCDDの分解に及ぼす影響を調べた結果、超音波出力が高いほど分解率が良く出力数150Wにおいて90分間の照射でほぼ100%分解した。反応温度・反応時間が増加するに連れ分解率が上昇した。pHによる影響はほとんど見られなかった。この分解反応は、超音波照射により発生したキャビテーションバブルが破壊される際に水を分解し、それにより形成したOHラジカルにより2,3,7,8-TCDDが酸化分解されていると考えられる。また、US/Fe(III)/UV系において2,3,7,8-TCDDは、約30分間で100%の分解に至った。したがって、US/Fe(III)/UV系は、高効率な無害化処理技術である可能性が見出された。超音波照射による2,3,7,8-TCDDの分解後の試料からは、2,3,7,8-TCDD以外の異性体及び同族体は検出されなかった。この結果より、2,3,7,8-TCDDの分解経路は単純な脱塩素化反応でなく、DD(Dibenzo-p-dioxin)骨格が破壊されていると考えられる。次年度は、US/Fe(III)/UV系にっいてより詳細な検討を引き続き行う予定である。
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