農薬による環境汚染が深刻となっており分解無害化技術が必要である。その分解法として光フェントン反応があるが、pH3付近の酸性域でのみ適用可能であった。そこで本研究では、光フェントン反応を中性域でも適用可能とするため、配位子を共存させることを検討し、また光フェントン反応と超音波の系を組み合わせ、分解の向上を計った。モデル化合物には、有機リン系農薬であるフェニトロチオンを用いた。 フェニトロチオン溶液に配位子溶液、鉄(III)溶液を加え、塩酸、水酸化ナトリウムでpH調節し、最終的に反応溶液はフェニトロチオン濃度10mg/L、体積100mLになるよう調整した。反応溶液に超音波照射、光照射を行った。 超音波-光フェントンハイブリッドシステムおけるフェニトロチオンの分解に対する諸条件の最適化を行った。反応pHは、ほぼ中性である6で行った。その結果、配位子としてシュウ酸5×10^<-3>M、鉄(III)5×10^<-4>Mであることが分かった。本最適条件下において、超音波照射・光フェントン・超音波/光フェントンの各系におけるフェニトロチオンの分解速度の比較を行った。超音波照射のみでは分解時間30分で約40%の分解率を示したのに対し、超音波/光フェントンでは、ほぼ100%の分解率であった。すなわち、フェニトロチオンの分解速度は、超音波照射<光フェントン<超音波/光フェントンであり、超音波照射に光フェントンを組合わせることで分解速度の向上に成功し、配位子を共存させることで中性付近でも分解反応が十分進行することを見出した。さらに、無機体への転化についても検討を行った。その結果、フェニトロチオン中の窒素は、亜硝酸イオンとして2時間後に100%、硫黄は、硫酸イオンとして12時間後に58%の収率で得られた。しかし、リンはリン酸イオンとして検出されなかったため、有機リン体として溶液中に残存しているものと考えられる。
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