従来のメタン発酵プロセスは、メタン生成菌の増殖速度が非常に遅い上、発酵槽内のメタン生成菌が流出するなどの理由により発酵効率が低く、未消化の残渣処理も必要なため、まだまだ多くの課題を抱えているのが現状である。それらの問題を解決し、高効率メタン発酵プロセスを実現するには、発酵槽内のメタン生成菌を高濃度に保持することが必要不可欠である。メタン発酵プロセスは、多種多様な微生物が高密度に存在する人工生態系の1つである。本研究では、消化発酵液から集積培養した3種類の酸生成菌(タンパク質分解菌群、炭水化物分解菌群、脂肪分解菌群)と、Methanosaeta concilii(DSM3671株)とMethanosarcina barkeri(JCM10043株)の2種類のメタン生成菌を選定し、それらの表面性状の測定を行い、メタン生成菌の選択的固定化について検討した。その結果、3種類の酸生成菌(タンパク質分解菌群、炭水化物分解菌群、脂肪分解菌群)およびM.barkeriは疎水性かつ負帯電性の微生物であることが分かった。それに対して、M.conciliiは疎水性かつ無帯電という特異的な微生物であることが分かった。竹炭とアルミナを用いてメタン発酵菌群の固定化実験を行ったところ、酢酸資化性メタン生成菌はアルミナ(正帯電、親水性)にはほとんど付着しないが、竹炭(負帯電、疎水性)には付着しやすいことがわかった。また、担体に固定化された菌体を電子顕微鏡により直接観察した結果、竹炭にはMethanosaeta様の菌体が多数付着していることも確認された。以上の結果より、メタン発酵プロセスにおいて最も重要な菌体であるMethanosaeta属を選択的に固定化するには、メタン発酵菌群に含まれるその他の嫌気性菌の付着が抑制できる疎水性かつ負帯電の担体が適していることを明らかにした。
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