研究概要 |
従来のメタン発酵プロセスは,メタン生成菌の増殖速度が非常に遅い上,発酵槽内のメタン生成菌が流出するなどの理由により発酵効率が低く,未消化の残渣処理も必要なため,まだまだ多くの課題を抱えているのが現状である。それらの問題を解決し,高効率メタン発酵プロセスを実現するには,発酵槽内のメタン生成菌を高濃度に保持することが必要不可欠である。平成18年度の研究において,メタン発酵の中核を担う酢酸利用性メタン生成古細菌の細胞表面の性状分析を行い,Methanosarcina barkeri(JCM 10043株)は疎水性かつ負帯電,Meihanosaeta concilii(DSM 3671株)は疎水性かつ無帯電という特異的な微生物であることが分かった。これらの結果に基づき,平成19年度の研究では,コロイド科学の観点から細胞の表面性状が担体への微生物付着および微生物間付着に及ぼす影響について検討した。その結果,微生物の付着には微生物や固体表面の疎水性が重要な役割を果たすことが明らかとなった。また,従来,コロイド科学め分野において,微粒子の安定性の評価に良く用いられる古典的DLVO理論に,疎水性相互作用を考慮した拡張DLVO理論を用いて微生物のコロイド的挙動を予想できることも分かった。さらに,消化発酵液から集積培養したたんぱく質分解菌がM・harkeriの急速凝集を促進することも明らかとなった。このことより,本研究で分離したたんぱく質分解菌は,消化発酵槽内における生育状態を制御することによって,発酵槽内における迅速なグラニュール形成によるメタン生成古細菌の高密度を行うための微生物凝集剤(バイオサーファクタント)としての利用が期待できる。
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