高効率メタン発酵プロセスを実現するには、発酵槽内のメタン生成菌を高濃度に保持することが必要不可欠である。平成20年度は、まず消化発酵液から集積培養した3種類の酸生成菌(タンパク質分解菌群、炭水化物分解菌群、脂肪分解菌群)と、2種類のメタン生成菌Methanosaeta concilii(DSM3671株)とMethanosarcina barkeri(JCM10043株)について3種類の溶媒を用いて接触角測定を行い、菌体の表面張力を定量的に見積もった。そして、同種菌体同士の付着による自由エネルギー変化を計算した結果、これまでのMATH法による定性的評価とは異なり、3種類の酸生成菌とMethanisaeta conciliiは親水性、Methanosarcina barkeriは疎水性であることが分かった。すなわち、メタン発酵の中核を担うメタン生成菌Methanisaeta conciliiは、単独ではグラニュールを形成し難いことが推察され、Methanisaeta concilii単独系での凝集実験からも自己凝集が起こらないことが確認された。これらのことは、前年度に報告したMethanosarcina barkeriの場合と同様に、Methanisaeta conciliiにもグラニュール形成を促進する物質が消化発酵槽内に存在することを示唆している。また、酢酸を基質、竹炭とアルミナを固定化担体とし、バイオガス生産実験を行った。その結果、担体が竹炭の場合、メタンガスの発生が観察されたが、アルミナの場合、メタンガスは発生しなかった。このことは、酢酸資化性メタン菌が竹炭だけに付着することを示唆しており、メタン生成菌の担体への付着による自由エネルギー変化の傾向と良く一致していた。以上より、菌体と担体の表面張力がメタン生成菌の高密度固定化に重要な因子であることが明らかとなった。
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