研究概要 |
本研究の特色は、種々の担持試薬を用いることにより多段階の反応をワンポットで行うところにある。同一容器内では相互に反応する試薬でも無機固体に担持することでその共存を可能にし、連続して多段階の反応をワンポットで行うことを目的とした。 天然物や生理活性物質の合成において、酸性条件下で反応を行った後に塩基性条件下で反応を行ったり、あるいは塩基性条件下で反応を行った後に酸性条件下で反応を行うことは少なくない。そこで、本年度の研究では、従来均一系内では不可能であった酸・塩基共存反応系の開発を行い、酸・塩基連続反応を実現した。 均一系では中和してしまうために共存できない炭酸ナトリウム(Na_2CO_3)及びポリリン酸(PPA)を担持試薬Na_2CO_3/SiO_2とPPA/SiO_2として用いることで同一容器内での酸・塩基の共存を可能にし、アリールチオールおよびα,β-不飽和アルデヒドから、ワンポットで塩基・酸触媒反応を連続して行い、チオクロマン誘導体の合成が可能であることを見出した。本合成法では従来の合成法とは異なった立体選択性が見られ、trans-体が選択的に得られることが明らかとなった。これは、反応がPPA/SiO_2表面上で進行しているとこに起因するものである。現在までにこれらの化合物を立体選択的に合成した例はなく、興味深い結果である。 本研究で開発された酸・塩基共存反応系をさらに他の酸塩基連続反応に用いることで、より簡便に多くの有用な化合物の合成が可能となると考えられ、現在その応用研究を行っている。 これらの結果の一部はSynlettにて報告を行った。
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