研究概要 |
利用用途が限られており、未利用資源となっているタケ・ササ類を環境付加の少ない酵素糖化処理によって資源化するため、今年度はマダケを中心とした成分分析を行い、早生資源としての特徴を把握することを目的として研究を行った。森林総合研究所(茨城県つくば市)樹木園内のマダケを伸長成長段階ごとに収穫した。樹木園内のマダケの大きさは、枝が伸長して皮が脱落するまでに平均6メートルほどであった。地上より1メートル毎に伐採し、チップ化して水分含量の変化を測定した後、60℃で含水率が10%以下になるまで乾燥させてから0.5mmの篩を装着したロータースピードミルで粉砕化を行い、マダケの成分分析を行った。マダケは成長するに従って根元からリグニン含量が増加していくが、枝が展開するとその違いが無くなっていく傾向が認められた。マダケの多糖成分は、主にグルコースとキシロースであり、その存在比はほぼ1:1であったが上部ほどグルコースの割合が若干多くなる傾向が認められた。木質系バイオマスを処理するのに有効なセルラーゼ製剤の一つであるメイセラーゼ(明治製菓:Trichoderma viride由来)に含まれる各種の多糖類分解酵素の活性を調べると、メイセラーゼではキシラナーゼ活性は多少含まれているものの、β-キシロシダーゼ活性は認められなかった。2メートル超にまで伸長したマダケ(幼竹)のリグニン含量は全体で8%以下であり,成竹に比べてきわめて低く、アルカリ処理や蒸煮爆砕といった前処理を施さなくても、メイセラーゼによる酵素糖化処理で細胞壁多糖の約75%が糖化された。しかし、今回のマダケ試料のようにキシラン関連成分が多いと予想される資源を十分に分解するには、トリコデルマ由来の酵素製剤で一般的に言われているβ-グルコシダーゼの不足を補うほか、キシラン分解活性などの補填が有効であることが示唆された。
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