研究概要 |
1.2,2':6',2"-テルピリジン(tpy)固体の光励起状態からの失活機構 ナノ集積構造の異なる三種類のtpy固体(板状結晶、針状結晶、アモルファス固体)について、光励起状態からのエネルギー失活過程を詳細に検討した。その結果、光励起状態からの非放射失活速度定数knrについて、効率よい発光を示す板状結晶はknr=1.7x10^8 s^<-1>であったのに対してほとんど発光しない針状結晶とアモルファス固体のknrは1.2-1.8x10^9 s^<-1>と約10倍大きいことがわかった。一方、放射失活(=発光)速度定数krは発光量子収率によらず同程度の値(2-4x10^7 s^<-1>)であった。以上のことから、非放射失活過程の違いがtpy固体の発光特性を決定づける要因といえる。 これについて、tpy分子のコンホメーションとの関連性や単分子レベルの分子軌道計算など、種々検討をおこなったが、詳細なエネルギーダイヤグラムの描写には至らず、分子間相互作用を加味したより積極的な検討が必要であることがわかった。 2.蛍光性オリゴピリジンの設計とその特性解析 6-位にアミノ基を導入したtpyは溶液中で効率よい青色蛍光を示すことから、これらの誘導体の蛍光特性を解析し、オリゴピリジンの発光機構を解析する足がかりを得た。具体的には、6-位アミノ基をアルキル/フェニル置換した誘導体を種々合成して吸収・蛍光特性について検討した。その結果、吸収波長は置換基の種類や数にほとんど影響されなかったが、蛍光波長は置換基数の増加にしたがって、またアルキルよりもフェニル置換することで約20nmずつ長波長シフトした(ジクロロメタン溶液)。また、溶媒によっても蛍光波長は変化した。以上の結果から、6-アミノ置換tpyは、アミノ基への置換基導入および溶媒の極性という二種類の要素で蛍光波長のファイン・チューニングが可能であることを示した。
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