研究概要 |
本研究では、光アンチバンチングを示す有機ナノ粒子のサイズを解明することを目的とする。蛍光性分子からなるナノ粒子を作製し、そのナノ粒子1粒からの蛍光を独自に開発した単一分子分光法を駆使して測定を行い、蛍光の光アンチバンチングと粒子サイズを相関づけて測定する。単一分子からの蛍光は光アンチバンチングを示すが、バルク固体は示さない。では、どのくらいのサイズであれば光アンチバンチングを示すのか。この疑問を世界に先駆けて解明することが本研究の目的である。 平成18年度は、蛍光性分子としてN, N'-bis(2,6-dimethylphenyl)-3,4,9,10-perylene-dicarboxyimide(DMPDI)を用い研究を進めた。再沈法によりDMPDIのナノ粒子を作製した。走査型電子顕微鏡観察から、粒径を約35〜85nmと見積もった。また、X線回折測定の結果から、作製したナノ粒子は結晶構造を形成している、すなわちナノ結晶であることを確認した。顕微鏡下において単一ナノ結晶からの蛍光強度・蛍光寿命、およびコインシデンス測定の同時測定を行い、単一ナノ結晶の光アンチバンチング挙動を測定した。その結果、作製したサイズ領域にある単一ナノ結晶からの蛍光は光アンチバンチングを示すことを見出した。この結果は、複数の蛍光性分子から構成される分子集合体であっても、そのサイズをナノメートルスケールに制御することにより、光アンチバンチングが観測されることを初めて実験的に示したものである。また、単一ナノ結晶からの発光挙動を詳しく測定したところ、単一ナノ結晶からの蛍光はある時間には結晶内の1カ所の発光サイトから発光しているが、その発光サイトの種類、および位置は時間と共に変化することがわかった。
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