光通信システムにおいて、光集積回路(光IC)チップと光ファイバの結合損失が問題となる。サブ波長格子は入射波長よりも小さいナノ周期構造であり、高効率な入出力カプラ、位相板、反射防止フィルタ、偏光フィルタ、バイナリーレンズなどが提案されている。本研究では光ICの入出力ポートとなる光導波路端面にサブ波長格子を製作し、光通信システムの光利用効率の向上を目指した素子の開発を目的とする。 本年度は、昨年度に製作した冶具を用いて基板端面へのナノインプリントリソグラフィを行い、光導波路端面にサブ波長格子を製作した。はじめに、安価なガラス基板端面へパターニングの実験を行い、パターニング精度や均一性を評価した。テーパ状サブ波長構造を用いて、400〜900nmの波長域で99%以上の高い透過率を示す構造を設計した。構造の光学特性はRigorous Coupled-Wave Analysisを用いた計算プログラムで行い、ナノインプリントリソグラフィに用いた樹脂の屈折率は屈折率測定装置により測定した値を用いた。計算結果より、モールドは周期400nm、高さ900nmのテーパ形状二次元サブ波長構造として設計された。パターンはサブ波長格子であり光学顕微鏡で評価するのは困難であるので走査電子顕微鏡にて形状評価を行った。次に、光導波路基板端面へのサブ波長格子の形成を行った。実験を進めると同時に冶具の改良を行った。冶具で重要な点は、光導波路基板端面とモールド面との平行度であり、ナノインプリント装置自体のプレス面の平行度は完全でないため、平行度調整機構と圧力測定フィルムにより高精度な平行出しを行った。光導波路基板端面へ製作したサブ波長格子を介して光導波路へ光を結合させ、光透過特性の評価を行い、光利用効率の高い素子の開発に成功した。最後に、本研究の総括を行った。
|