研究概要 |
ブロードバンド通信が普及した今日では,多様化したニーズとトラヒックに対応したサービス品質制御技術の確立が強く望まれており,マルチメディアトラヒックの適切なモデル化,さらには,それを入力とする待ち行列モデルの解析から得られる知見が極めて重要となっている.そこで,研究代表者とその研究協力者はマルチメディアトラヒックモデルとしてマルチクラス・マルコフ型流体フロー(MMFF)を新たに提案した. 本年度ではまず,MMFFを入力とする先着順型単一サーバ待ち行列モデルに対して,定常状態における各クラスの系内流体量分布の結合Laplace-Stieltjes変換を導出し,その解析結果を基にクラス別系内流体量の任意次のモーメントに対する数値計算アルゴリズムを構築した.これにより,マルチメディアトラヒックが引き起こす混雑現象を定量的かつ定性的に検証することが可能となった.以上の成果は海外英文誌に投稿し,2007年3月採択(accept)された. ところで,実システムでは一般に複数のサーバが存在する.したがって,複数サーバモデルの解析は応用上非常に重要であるが,MMFFを入力とする複数サーバモデルの解析は困難である.そこで,代替モデルとして,集団マルコフ型到着過程を入力とする複数サーバ・固定長サービスモデルを考えた.これは流体を小さな固定長セルの集まりとして離散化したモデルに相当する.こうした代替モデルに対して解析を行い,系内総セル量の過渡状態分布に関する精度保証付き計算アルゴリズムを構築した.この成果は2007年3月,国内英文誌に掲載された.さらに,複数サーバモデルにおける系内総セル量の定常裾分布の漸近的な性質に関して既に一定の理論的成果を得ており,その成果を国内研究会で発表した.
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