研究概要 |
昨年度は提案したトラヒックモデル,マルチクラス・マルコフ型流体フローを入力とする最も基本的な待ち行列モデルを解析した.その成果は原著論文として海外英文誌に掲載されている.本年度はそうした昨年度の成果を踏まえ,オンデマンド型P2Pストリーミングサービスシステムにおけるクライアントピアの受信バッファをマルコフ型流体待ち行列でモデル化し,受信バッファにおいてストリーミングデータが枯渇する確率を導出した.そして,解析結果を基づく数値実験の結果,普通ピアノードのアップロード帯域を僅かに増加させることでサービス品質の大幅な改善が期待できることを確認した.この成果は国内研究会の技術報告書として公開されている. また,本年度は上記の研究成果に加えて,裾の重いサービス時間分布を持つ待ち行列モデルの解析も行った.近年,インターネットを流れるファイルサイズは裾の重い分布に従うことが確認されているため,裾の重いサービス時間分布を持つ待ち行列モデルの解析は極めて重要である.当該研究では,最新の大偏差理論や行列解析法を駆使することで,系内客数分布の裾確率に対する劣指数的漸近公式を導出した.この漸近公式は系内客数が十分大きい場合に成り立つものであるが,基本的なシステムパラメータで記述されているため,スイッチやルータ等のバッファ容量の設計に向けた近似公式としての利用が期待できる.また,非ポアソン型到着モデルに対して,系内客数分布の裾確率の劣指数的漸近公式を提示したのは当該研究が初めてである.この成果は国内研究会で発表し,現在,海外英文誌に投稿中である.
|